3人家族 その11/ END [3人家族]
果たして人は、14年間、妻と子を捨てて顧みなかった男を許せる
ものだろうか?
自分のためにだけ生きた男が年老いて独りで死ぬことの孤独に耐え
きれず許しを請いに来たからといってそれを妻や娘は 許せるものだろうか?
(ナレーション:矢島正明)
「悔しいけどね、一緒に暮らすことに決めたよ。 寂しい同士じゃ、
早々意地ばっかり張っていられないわ」
ホッと素直に喜ぶ敬子(栗原小巻)と明子(沢田雅美)
雄一(竹脇無我)「やあ!」
敬子(栗原小巻)「こんにちは!」
雄一「お父さんが?」
敬子「ええ」
雄一「それはおめどう!」
敬子「今日はお昼ごちそうするわ!うんと高くてもいいわ!」
雄一「ようし!(笑)」
昼食後、慌ただしくそれぞれの職場に戻る二人。
敬子「出発まで毎日こんな風なの?こんな風にしか会えないの?」
雄一「日曜があるよ」
敬子「日曜は母と会って欲しいんです」
雄一「そうだったね。父とも会って欲しいし。
いっそ二人で、両方一緒にご馳走しようか?」
敬子「そうね・・・それはそれでもいいわ」
雄一「じゃあどっか店決めとくよ」
敬子「あたしが言うのは二人だけの時間・・・」
雄一「分かってるさ。日曜だって一日ご馳走してるわけじゃないよ」
雄一「出発前の1日くらいは、たぶんとれると思うんだ、休み」
敬子「1日?」
雄一「そういう会社なんだ」
敬子「それであなた平気?」
雄一「平気じゃないさ。
だから、お昼だって、帰りだって出来るだけ一緒じゃないか」
敬子「2年間会えなくなるのよ?」
雄一「・・・うん」
敬子「・・・ごめんなさい。ちょっとわがまま言いたかったの」
雄一「いいんだよ。とにかく出来るだけ会おう。
出来るだけしゃべろう。2年分だから」
敬子「ええ」
雄一「可愛いな、君は」
敬子「(笑み)」
雄一「さっ!腕を組もう!」
敬子「いいの?」
雄一「どうして?」
敬子「会社の人に会うかも」
雄一「かまうもんか!見たいやつは指を咥えてればいい」
敬子「まあ!ふふっ」
雄一「さあ皆さん、僕の可愛い人を見て下さい。
僕が、初めて心から好きになった人を見て下さい」
敬子「嘘みたい(笑)」
雄一「何が?」
敬子「初めて会った時のあなたが違う人みたい(笑)」
雄一「そりゃそうさ。君に会って変わったんだ(笑)」
敬子「ごめんね(笑)」
初春の日比谷公園でクルクル回る2人。春である(笑)。
キク「せっかく築いた仕事じゃありませんか。
あたしの方から行きますよ」
兼一「うん。そうしてくれると嬉しいが」
キク「2年経って敬子がいなくなれば、明子も大学2年だし。
そこまで来ればアラスカだって北極だってどこへでも
飛んで行きますよ」
再就職が決定した耕作とハルもほのぼのとした雰囲気に。
帰宅した健に大学進学のお祝いに電気シェーバーを贈るハル。
雄一「たまには兄さんにも貸せよ」
建 「1回10円。ねえおばさん、10円ずつ取って、時々おばさんと一杯やろうよ」
雄一「こいつ(笑)」
1人1人が2人になって、その事の意味を思いがけなく深く
受け止めて、耕作もキクも、健一もハルも、この席を祝っ
てくれているのだと分かると、雄一と敬子は胸が熱くなった。
励まされる思いであった。
(ナレーション:矢島正明)
敬子「あたしね・・・」
健一「うん?」
敬子「黙っていようと思ったけどやっぱり言っちゃうわ」
健一「何?」
敬子「はっきりした事じゃないのよ?」
健一「うん」
敬子「ローマの支社に行けるかもしれない」
雄一「本当!?」
敬子「センターの支社長に事情を話したの。
だって、2年間一度も会えないなんて寂しいんですもの」
雄一「ローマならカイロは近いものね」
敬子「ローマっていうのは、あたしが希望したの。
だってカイロ行ってたら毎日会いたくなって
仕事の邪魔になるでしょ?」
雄一「君らしいな」
敬子「ローマなら無理すれば1年に4回くらい会えるんじゃないかしら?」
雄一「そう。そうなるといいね」
敬子「当てにはしないでね。
団体がたくさん来るんで人手が足りないって聞いたんで
出来ればってお願いしてみたの」
雄一「ありがとう」
敬子「やだわ、ありがとうなんて」
ゆきずりの人であれ 微笑むがいい
見知らぬ人であれ 求めるがいい
誰もが寂しいのだから
誰もが強く生きたいのだから
(ナレーション:矢島正明)
木下恵介生誕100年 木下恵介アワー「3人家族」DVD-BOX<5枚組>
- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2012/10/26
- メディア: DVD
はじめまして
この前遅ればせながら日本映画専門チャンネルで見ました。
とても面白くてはまってしまい、毎日のように録画を見返してます。
栗原小巻さんのあまりの美しさに驚きとともに感動しましたし、竹脇無我さんとの美男美女カップルもとても華やかで心が躍りました。
ただ敬子に付きまとう写真家の沢野さんがすごく見苦しくてイライラしてしまいます。
強引でしつこすぎて今だったら警察のお世話になりそうな人ですね。
最後もグズグズ恨みがましくて浅ましくてすごく気持ち悪かったです。
最終回は試聴者思いのハッピーエンドで素晴らしいドラマだと思います!
個人的には明子が一番好きなキャラクターです。
by 名無し (2021-05-04 01:28)